スマートグラスをかけるだけで、目の前の相手の言葉が、字幕のように訳されて見える。スマホをかざせば、会話がほぼリアルタイムで通訳される。——そんな道具が、どんどん身近になっています。
すると、こんな心の声が聞こえてきます。「もう、英語を勉強しなくてもいいのでは?」
私の答えは、はっきりしています。英語は、手放さないほうがいい。むしろ、これからが、英語の本当の価値が問われる時代です。
この考えを裏づけてくれる記事に出会いました。今日は、その内容を紹介しながら、理由をお伝えします。
この記事の要約
- 翻訳は、道具が代わる:メールも資料も会話も、AIが高い精度で訳してくれます。「訳す」作業の価値は、これから下がっていきます。
- 差がつくのは「文脈」:相手の歴史、価値観、立場をつかむ力は、AIに丸投げできません。
- 英語は「教養」になる:訳せることではなく、世界の議論に直接触れられること。それが、英語を持ち続ける意味です。
翻訳の価値は、下がっていく
メールの翻訳、資料の翻訳、会議の議事録の英訳。これらは、生成AIが、かなりの精度でこなします。AIスマートグラスのようなライブ翻訳のデバイスが広まれば、会話の場面でも、同じことが起きるでしょう。
「訳す」という作業そのものの価値は、これから下がっていきます。ここは、素直に認めるべきだと思います。
ただし、話はここで終わりません。おもしろいのは、ここからです。
AIに代われないのは、「文脈」
紹介するのは、戦略コンサルタントの坂田幸樹さんが書いた記事です。そこでは、こう整理されています。AIが代わるのは「言語の処理」。でも、「文脈を理解し、関係を築く力」は代わらない。この2つを混同すると、「英語はもう不要」という結論になってしまう、と。
実例が印象的でした。東南アジアの同族企業の二代目オーナーとの交渉で、筋の通った提案が、なかなか前に進まなかったそうです。流れが変わったのは、会食の席。事業の話を、会社の歴史、創業者と地域のつながり、家族の誇りに結びつけて語ったときでした。
決め手になったのは、発音でも、語彙でもありません。相手の「文脈」を理解していたことです。
人は、言葉の意味だけで動くわけではありません。「なぜ、それを言うのか」「何を大切にしている人なのか」。そこを読めた人に、心を開きます。
これからの英語は、「教養」
筆者は、これから意味を持つ英語を、「教養」と位置づけています。具体的には、次のような力です。
- 歴史的な背景をつかむ力
- 宗教や価値観の違いを理解する力
- 婉曲表現(遠回しな言い方)を読み取る力
- ユーモアを受け止める力
さらに、トップ大学やテック企業の最新の議論は、まず英語で発信されます。翻訳を待っていると、細かなニュアンスが落ちてしまう。「訳されたもの」を読むのと、「原文」に触れるのとでは、見える景色が違うということです。
英語が「わかる」だけでは、足りない
筆者は、もうひとつ、鋭い指摘をしています。AIの力で、基本的な英語には、ほとんどの人が届くようになる。だから、「英語ができる」だけでは差がつかない。差がつくのは、英語で語られている中身を理解できるかどうか。その差は、静かに、でも着実に広がっていく、と。
耳の痛い話です。でも、私はこれを、希望だと受け止めています。「中身を理解する力」は、学べば、誰でも伸ばせるからです。
まとめ:英語は「翻訳」から「対話」へ
翻訳の価値は下がり、文化を介した対話の価値は上がる。これが、記事の結論でした。私も、強く同じ考えです。
スマートグラスは、言葉の壁を、確かに低くしてくれます。でも、その先にある「相手を理解する」という仕事は、自分でやるしかありません。
翻訳は、道具に任せる。理解と対話は、自分で持つ。——この線引きが、これからの英語学習の出発点だと思います。
参考:坂田幸樹「生成AI時代に、なぜ一流ほど英語を手放さないのか?」(ダイヤモンド・オンライン、2026年3月7日)
次のステップ:表現を「使える」英語にするには
この考え方も、「知っている」と「会話でとっさに使える」とのあいだには、実は大きな差があります。
「語学の習得には、時間がかかるから」。そう言って、あきらめていませんか? 始めなければ、何も変わりません。大事なのは、続けて、少しずつ積み上げていくことです。
文脈を理解できても、声に出せなければ、対話は始まりません。「知識はあるのに、話せない」。そんな方が、無理なく話す練習を始めるための4ステップを、次の記事にまとめました。

