塾の生徒から、ある質問を受けるようになりました。「CEFR(セファール)ランク」についてです。
学校の英語教育は、相変わらず「読む・書く」が中心です。受験生の多くは、英検を視野に入れて学習しています。
一方、ネットでも同じ質問が増えてきました。「TOEICのL&Rは持っています。でも、S&Wは受けていません。自分は、どのランクあたりなのでしょうか?」——これです。
結論から言うと、L&Rだけでは、公式のCEFR判定は出ません。ただ、おおよその位置を知る方法はあります。この記事では、その手順と、ランクがわかったあとの勉強法までまとめます。
この記事の要約
- 判定の壁:TOEIC L&Rだけでは、公的なCEFR判定は出ません。S&Wのスコアも必要です。
- 仕組み:S&Wのスコアを2.5倍して、L&Rに足した合計(満点1990点)で、ランクが決まります。
- 見当のつけ方:S&Wが未受験でも、ETS・IIBCの公式データから、おおよその立ち位置は推測できます。そのあとは、ランク別の勉強法へ。
CEFRとは|世界共通の「語学のものさし」
CEFRは、Common European Framework of Reference for Languages の略です。日本語では、「外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠」と呼ばれます。2001年に、欧州評議会が発表しました。
難しく聞こえますよね。でも、要は「英語力を、A1からC2までの6段階で測る、世界共通のものさし」です。
まず、次の2枚を見てください。


1枚目は、文部科学省がまとめた対照表です。ケンブリッジ英検、英検、GTEC、IELTS、TOEFLなどのスコアが、CEFRのどこに当たるのか。1枚で見比べられます。
2枚目は、各ランクで「何ができるのか」の説明です。A1・A2が基礎段階、B1・B2が自立した段階、C1・C2が熟練した段階の言語使用者、と整理されています。
私が担当している受験生の多くは、英検2級の合格を目指しています。表で確認すると、2級はA2〜B1にまたがっていて、合格ラインはB1に入ります。「英検2級は、B1の入り口」。そんなイメージですね。
TOEIC L&Rだけでは、CEFRが出ない
では、TOEICはどうでしょうか。実は、ここに落とし穴があります。
対照表の下に、小さな注記があります。「TOEIC L&R/TOEIC S&Wについては、TOEIC S&Wのスコアを2.5倍にして合算したスコアで判定する」。——えっ、どういうこと? と思いますよね。順番に見ていきます。
- CEFRは、「聞く・読む・話す・書く」の4技能を、同じ比重で見る基準です。
- TOEIC L&Rは990点満点(リスニング495点+リーディング495点)。
- TOEIC S&Wは400点満点(スピーキング200点+ライティング200点)。
このまま足すと、読む・聞くの比重が大きくなりすぎます。そこで、S&Wを2.5倍して1000点満点にそろえ、合計1990点で判定するわけです。
たとえば、L&Rが600点、S&Wが240点の場合。600点+(240点×2.5)=1200点です。対照表に当てはめると、CEFRはB1になります。
| CEFR | 合算スコア(L&R+S&W×2.5) |
|---|---|
| C1 | 1845〜1990 |
| B2 | 1560〜1840 |
| B1 | 1150〜1555 |
| A2 | 625〜1145 |
| A1 | 320〜620 |
つまり、L&Rしか持っていない方は、判定に必要なスコアの「ほぼ半分」が欠けている状態です。進学や就職でCEFR基準の証明が必要なときは、S&Wを受けるか、最初から4技能を測る試験(英検やIELTSなど)を選ぶことになります。提出先によって条件は違うので、必ず募集要項で確認してください。
S&Wがなくても、公式データで「見当」はつけられる
ですが、方法はあります。S&Wのスコアを持っていなくても、公式のデータから、おおよその位置は予測できます。根拠は2つです。
- ETS(TOEICを作っている米国のテスト機関)の研究報告:2010年の報告書で、12,105人(韓国79%、日本20%、台湾1%)のスコアを分析しています。リスニング・リーディングと、スピーキング・ライティングの相関係数は、0.57〜0.66でした。
- IIBC(TOEICの日本の運営団体)の比較表:「TOEIC L&RとTOEIC S&Wのスコア比較表」は、日本と韓国の受験者2,064人のデータをもとに、L&Rのスコアから、S&Wのスコアを予測する目安として公開されています(2007年10月)。
相関係数とは、2つのスコアがどれくらい連動するかを表す数字です。1に近いほど、ぴったり連動します。0.6前後は、「かなり連動する。でも、ぴったりではない」という水準ですね。
ここは正直にお伝えします。この方法で出るのは、あくまで「見当」です。L&Rの点数が同じでも、S&Wの点数は人によってばらつきます。しかも、どちらの資料も少し前のデータです。比較表の具体的な数字は、リンク先の最新版で確認してください。
参考までに、IIBCが公表している、TOEICの各テストとCEFRの対照表です。数字は、各レベルに対応する最低スコアです。L&Rだけでも、おおよその目安は見られます。ただし、公的なCEFR判定に使われるのは、S&Wを含めた合算スコアです。

立ち位置がわかれば、あとは簡単
自分の立ち位置が見えてくれば、あとは簡単です。自分に合ったトレーニングを提供している教室やアプリを、チェックしていくだけです。
目標にするランクが決まったら、ドンピシャのランク、たとえば「B1」に挑戦してみましょう。もし厳しければ、A2からやり直す。臨機応変で大丈夫です。もちろん、ランクアップも同じです。
ここからは、TOEICのスコアを上げる勉強法を、基礎編と応用編に分けて紹介します。
TOEICスコアアップ勉強法:基礎編
目標のCEFRランクから、TOEICの目標スコアを決めたら、いよいよ勉強に入ります。「何から手をつければいいの?」という方は、次の順番で進めてください。
①まず、発音から
TOEIC対策の前に、耳と口の準備運動として、発音を練習しましょう。発音は、TOEICに限らず、英語力全体を支える部分だからです。
日本語にない英語の音は、自分で出せないと、聞き取ることもむずかしい。「スコアが伸び悩んでいる」「何から始めていいかわからない」という方は、ここが出発点です。
②語彙と文法を、もう一度
目安として、L&Rが500点に届いていない方(A1〜A2あたり)は、中学レベルの単語と文法に、抜けが残っている可能性があります。
ここを飛ばすと、先の勉強が積み上がりません。聞く・読む・話す・書く、それぞれの強化に進むのは、発音と語彙・文法が固まってからで十分です。
③出題形式とテクニックを知る
土台ができたら、TOEICの出題形式を知りましょう。何が問われるかがわかれば、勉強の的が絞れます。
たとえば、リスニングでは設問を先に読んでおく。目標スコアに合わせた時間配分を決めておく。こうした試験のコツを押さえておくと、同じ実力でも、点数が変わってきます。
TOEICスコアアップ勉強法:応用編
基礎がある程度身についたら、次は問題集を繰り返し解く段階です。L&Rだけでなく、S&Wの問題集も同じ考え方でOKです。
- 弱点が見える:実際に解くと、今の自分に足りない力がはっきりします。間違えた問題を分析すれば、どこを補強すべきかが決まります。
- 試験に慣れる:出題形式に慣れて、時間配分も上手になります。
「どこを重点的にやればいいのか、わからない……」「効率よくスコアを上げたい!」という方こそ、問題集の出番です。解きっぱなしにせず、間違えた理由を一言メモしておくと、次の一手が見えやすくなります。
スピーキングを鍛える|ひとりだと、いちばん進みにくい
TOEICの中でも、ひとりで伸ばすのがいちばんむずかしいのは、スピーキングではないでしょうか。
聞く・読む・書くは、音声や文章さえあれば、自分のペースで練習できます。でも、「話す」練習は、ひとりだと急にハードルが高くなります。「これで合っているのかな」と、確かめる相手がいないからです。
だからこそ、相手がいる環境を借りましょう。
- スピーキングを教えてくれる教室(対面・オンライン)
- 話す練習ができるアプリやオンライン英会話
- ひとりでやるなら、自分の声を録音して聞き返す
選ぶときの基準は、さきほど見当をつけた今のCEFRランクです。B1なら、B1向けの内容から。きつければ、ひとつ下へ。この順番なら、遠回りになりません。
次のステップ:表現を「使える」英語にするには
この実用知識も、「知っている」と「会話でとっさに使える」とのあいだには、実は大きな差があります。
ランクやスコアがわかっても、声に出す練習をしなければ、英語は口から出てきません。「知識はあるのに、話せない」。そんな方が、無理なく話す練習を始めるための4ステップを、次の記事にまとめました。

