この記事の要約(Key Takeaways)
- 会話例:Do not push my buttons.(いい加減にして・怒らせないでよ)のように、我慢の限界が近いことを警告します。
- 違い:annoy が結果として苛立たせるのに対し、push someone’s buttons は相手の弱点を狙って意図的にという含みを持ちます。
- 別表現:get on my nerves(神経にさわる)、rub me the wrong way(癪にさわる)が近い表現です。
人にはそれぞれ、押されると反応してしまうボタンがある——そんな発想から生まれたのがpush someone’s buttons です。機械のボタンを押せば決まった反応が返るように、その人の弱点を突けば必ず苛立つ。相手を知り尽くしているからこそできる行為を表しています。
意味は「怒らせる・苛立たせる・神経を逆なでする」。否定の命令形にした Do not push my buttons. で「いい加減にして・これ以上怒らせないで」という警告になります。
鍵になるのは意図性です。たまたま気に障ったのではなく、相手が分かっていてやっているという前提があります。だから家族や恋人、長い付き合いの友人との間で使われることが多いのです。
どんな場面で使うのか
兄弟げんか、夫婦の言い合い、気心の知れた友人同士のからかい。相手の弱点を知っている関係でこそ成立します。初対面の人には使えません。相手がこちらのボタンを知らないからです。
使うタイミングは限界の少し手前。すでに爆発したあとではなく、「そろそろやめないと本気で怒るよ」と伝える段階の言葉です。警告として機能させるところに意味があります。
会話例5選

①兄弟げんかで
Stop it. Do not push my buttons.
やめてよ。これ以上怒らせないで。
②友人との会話
She knows exactly how to push my buttons.
彼女、私の怒らせ方を完璧に分かってるんだよね。
③職場の愚痴として
He pushes my buttons every single meeting.
会議のたびに、あいつが神経を逆なでしてくるんだ。
④自分を振り返って
I need to stop letting him push my buttons.
彼のペースに乗せられるのは、もうやめないとな。
⑤家族との会話
My little brother lives to push my buttons.
弟は私を怒らせるために生きてるみたい。
通訳者が教えるニュアンスの深掘り
「苛立たせる」を表す英語は、意図があるか、どの程度こたえているかで選び分けます。
| 表現 | ニュアンス | 意図の有無 |
|---|---|---|
| push my buttons | 弱点を突いて怒らせる | 意図的。相手を知っている |
| get on my nerves | 神経にさわる | 問わない。継続的 |
| rub me the wrong way | なんとなく癪にさわる | 意図なし。相性の問題 |
| annoy | 苛立たせる | 中立。最も一般的 |
| see red | カッとなる | 怒った側の状態を表す |
rub me the wrong way との差が分かりやすいでしょう。狙って押してくるのが buttons、なんとなく合わないのが rub。相手を責めるかどうかが変わってきます。
次に読みたいフレーズ
ボタンを押され続けた先に待っているのが、怒りの爆発です。カッとなる瞬間そのものを表す表現も、あわせて押さえておきましょう。
使い方のポイント・注意点
- buttons は複数形。button と単数にはしません。
- 所有格を入れ替えてpush his buttons / push her buttons と言えます。
- press my buttons という形も使われますが、push のほうが一般的です。
- 親しい関係が前提。初対面の相手には使いません。
- 爆発したあとではなく、限界の手前で警告するのが本来の使い方です。
Do not push my buttons. は「いい加減にして・怒らせないで」。人の心にあるボタンを、分かっていて押してくる相手への警告です。裏を返せば、こちらの弱点を知っているほど近い相手ということ。そこまで含めて味わい深い表現です。
次のステップ:表現を「使える」英語にするには
この表現も、「意味を知る」と「会話でとっさに使える」とのあいだには、実は大きな差があります。
なぜ「知っているのに口から出てこない」のか——10年間プロ通訳をしてきた経験から、その理由を5つの特徴にまとめました。

